6月18日開催:『第13回種を蒔く人のお話を聴く会 / Listening to Seedfolks~ダイバーシティ研究所田村太郎さん』のご報告

 

 

ご参加くださった皆さま、ありがとうございます。

皆さまのご協力に感謝致します。

 

◆参加人数:16

 

◆ドネーション額:24,000円(第10SDGs勉強会のドネーションと合わせて)

620日に公益財団法人チャイルド・ケモ・サポート基金様へ24,000円をお送り致します。

 

Love, Peace, Freedom & Diversityポストカード10枚:1,000

71日に国連UNHCR協会様へ1,000円をお送りし、難民の皆さんのために役立てていただきます。

 

◆参加者の皆さまのお声(アンケートから「気づき」「学び」などを抜粋)

So inspiring speaker. Doing extraordinary things to help people in the community and the country as a whole. Your son must be happy now looking at your hard work to help patients with cancer to have a comfortable place to stay while having the treatment. So moved by your kindness and generosity.

・社会の課題を解決するための種を蒔き続けてこられた田村さんのお話を聴かせていただきながら、多世代の多様な一人ひとりに勇気や力を届けてこれらていると感じました。

・「自由の種を蒔き、寛容の芽を育て続けたい」という田村さんのメッセージに深く共感します。

・田村さんとedgeコミュニティの若者たちは、多様な社会課題に取り組まれ、少しずつ社会をより良い方向へと変えていかれていると感じます。自分自身もできることを続けていこうと思います。

・チャイルドケモハウス設立と継続は、多くの子どもたちとご家族の光となっているのではないかと思います。

・多様性にはいろいろありますが、今まで気づかなかった多様性の部分に、ある時、気づくこともあると思いました。

・共生や同化、自分の見方や考え方も変えないといけない時もあると感じました。

・みんなが困らない社会にするために、社会で多様性が受け入れられる様、自分自身も変化していくようにしたいです。

・「できない理由を見つけるのは簡単」、「無いものは創る」など、心に響く強いメッセージがたくさんありました。

・共生についてあらためて考えました。

・多様性、共生について考える機会が得られました。また、社会問題に関しても、今まで以上に身近に感じられるきっかけになりました。

 

 

 

 

  

【過去のご報告】

2022年4月23日開催:『第12回種を蒔く人のお話を聴く会~Common Caféプロデューサー山納洋さんのご報告

2022年2月26日開催:『第11回種を蒔く人のお話を聴く会~国際環境NGO350 Japan 伊与田昌慶さん』のご報告

2021年12月26日開催:『第10回種を蒔く人のお話を聴く会 / Listening to Seedfolks~奥田鹿恵子さん』のご報告

2021年12月11日開催:『第9回 種を蒔く人のお話を聴く会/Listening to Seedfolks~芳島昭一さん& RHEP(難民高等教育プログラム)大学生

2021年10月16日開催:『第8回種を蒔く人のお話を聴く会/Listening to Seedfolks〜福田英子さん 』のご報告

2021年8月28日開催:『第7回種を蒔く人のお話を聴く会/Listening to Seedfolks〜杉岡博幸さん 』のご報告

2021年6月12日開催:第6回種を蒔く人のお話を聴く会/Listening to Seedfolks〜五ふしの草 榊原一憲さん) 』& 『第4回SDGs勉強会(フェアトレード)』のご報告

2021年3月20日開催:『第5回種を蒔く人のお話を聴く会/Listening to Seedfolks〜中渓宏一さん』のご報告

2021年2月13日開催『第4回種を蒔く人のお話を聴く会/Listening to Seedfolks〜登大路総合法律事務所 所長弁護士田中啓義さん』& 『第3回SDGs勉強会』ご報告

2020年12月26日開催:『第3回種を蒔く人のお話を聴く会/ Listening to Seedfolks 〜国連UNHCR協会芳島昭一さん』&『第2回SDGs勉強会』のご報告

2020年11月6日開催:『第2回種を蒔く人のお話を聴く会〜特定非営利活動法人AMDA社会開発機構ネパール事業統括代行 奥田鹿恵子さん』のご報告

2020年10月17日開催:『第1回種を蒔く人のお話を聴く会 & 第1回SDGs勉強会』のご報告

 

種を蒔く#334 2022617

 

田村太郎からあなたへ

 

世の中がますます、不自由で不寛容な方向に進んでいるように感じます。

 

理想と現実とのギャップを自分の中で受け止めきれなくなってきて、今年に入ってから私はむさぼるように本を読んでいます。「本に書いてあることはすべて過去のこと、いま起きていることは自分の目と足で確かめるべし」という高校時代の恩師の言葉を胸に、私はこれまで本を読むことには積極的ではなかったのですが、この半年は私の理想とする社会と現実との間がどんどん拡がっていく喪失感を、本を読むことで埋めています。なかでも「寛容」をテーマとした古典や文学、そして「遁世僧」が自由に行き来した日本の中世史に関する研究から、私はいま多くのヒントを得ています。

 

自由で寛容な社会はどうすれば実現するのだろうか。

 

私が悶絶しているこの問いは新しいものでも何でもなく、神話の時代から人類が向き合ってきたのだということを、本を読むことを通じていまさらながら改めて痛感しています。私たち人類は元来自由であり、自分の意志で行きたいところに行き、会いたい人と会い、自分で選んだ方法で時間を過ごしてきました。農業革命で「支配する者」と「支配される者」の関係が世界を覆ったものの、中世にはいったん自由で寛容な方向へと世界は舵を切ります。工業革命でふたたび支配と被支配の関係が復活し、いま、また自由で寛容な方向へ戻ろうとする混乱の渦中に私たちは立っている。過去に書かれた膨大な数の本の大海のほんの一部を舐めただけですが、自由と不自由、寛容と不寛容の間で大きく行き来する世の中の大きな流れをつかむことができた気がしています。そしてそのことの奥深さと塩辛さに、打ちのめされています。

 

「とにかく、ぼくたち、自分の畑を耕さなきゃ」

 

これは18世紀の啓蒙思想家ヴォルテールの小説「カンディード」の最後の台詞です。(ヴォルテール著・斉藤悦則訳『カンディード』光文社古典新訳文庫、2021年・第2刷)主人公・カンディードは愛する姫との関係を理由に故郷を追い出され、数々の災厄に遭いながら世界を放浪するのですが、最後に姫と、「最善説」を信奉する家庭教師、婆やとともに海の見える丘の上で平和な暮らしを手に入れます。丘の上からは、海を行き交う船に乗せられた、理不尽な罪状で拷問され流刑にされる人々が見えます。彼らはそうした人々を見ながら自分たちの人生をふりかえり、「死ぬほど理不尽な目に遭わされる人生と、死ぬほど退屈な毎日を過ごす人生のどちらがマシか」という議論を繰り広げます。が、議論をしていても何も変わらないということ、そしてとにかく目の前の仕事をすることの大切さに気づきます。

 

自由の種を蒔き、寛容の芽を育て続けたい。

 

ベルリンの壁が壊れたことに刺激を受けて世界を放浪して以来、私は社会の課題を解決するための種を蒔き続けてきました。災害や差別、病気に苦しむ人々を前に自分にできることを考え、実行してきました。しかし自分でも受け止めきれない現実が相次いで起こり、自らの未熟さ、力のなさを痛感したことから、この半年は少し立ち止まって自らの来し方をふりかえり、生き方を改めることにしました。本を読み人に尋ね、どうすれば自由で寛容な社会を実現できるのかを問い続けました。多くの発見があり、これからも勉強は続けたいと思う一方で、やはり何か具体的な行動を起こすことの大切さも再認識させられました。

 

ヴォルテールは代表作『寛容論』で次のように述べています。

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お前たちは力弱きものなのだから、お互いに助け合わねばならぬ。お前たちは無知なのだから、お互いの知識を持ち寄り、お互いに許し合わねばならぬ。お前たちのことごとくがそろって同じ見解を持つことは、とうていありえぬが、もしそんな場合にたった一人の者が見解を異にしたとしても、お前たちはこの者を大目に見なければならない。なぜなら、この者にそのように考えさせているのは、他ならぬこの私なのである。(ヴォルテール著・中川信訳『寛容論』中公文庫、2016年・第5刷)

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自由で寛容な社会をめざす私たちがいま反省すべきことがあるとすれば、それは自由で寛容な社会を受け入れられない人々のことを放置してしまったことだと思うのです。

 

618日、「種を蒔く人のお話を聴く会」という場でお話しすることとなりました。これまで自分が蒔いてきた種をふりかえる機会をいただき、反省することもたくさんありました。そして自分が大切にして来たものは何かに気づくことができました。それはやはり、「自由で寛容な社会をつくること」でした。いまはまだ不自由で不寛容な考え方が多勢を占めていますが、いつの日か、本当に自由で寛容な社会が必ずやってくると私は信じています。その日まで、あなたもあなたにできることを続けてください。

 

あきらめずに、自由の種を蒔き、寛容の芽を育てましょう。

 

 

プロフィール:田村太郎 兵庫県生まれ。阪神・淡路大震災で被災した外国人への支援を機に「多文化共生センター」を設立。2007年から「ダイバーシティ研究所」代表として活動するほか、社会起業家のコミュニティづくりや医療的ケア児支援などにも取り組む。復興庁・復興推進参与、明治大学大学院国際日本学研究科兼任講師なども兼務。共著に「阪神大震災と外国人」「自治体政策とユニバーサルデザイン」「つないでささえる」「夢の病院をつくろう」などがある。