2023年10月21日開催:『第16回SDGs勉強会~難民について』のご報告

 

ご参加下さった皆さま、ありがとうございました。皆さまのご協力に感謝致します。

 

◆参加人数:9

 

◆ドネーション:25,000円(第24回種を蒔く人のお話を聴く会のドネーションと合わせて)

 

1024日に25,000円をみ・らいず2様にお送り致しました

 

◆参加者の皆さまのお声

・日々、人間の歴史と共に、増え続ける難民…

知らず知らずのうちに日本も(自分も)、難民をうんでいたということ…

 様々な角度から情報をみて判断していく大切さを改めて感じました。

 ありがとうございました。

・難民の問題を分かりやすく教えて頂きました。しかしなかなか何をやれば良いのかは難しく、歴史的背景もありほんとに難しい問題だと思いました。

・難民についてワークショップ楽しかったです。大変勉強になりました。

自分が難民になるなんて考えた事のない平和ボケしてる自分に反省です。

・難民が生まれる背景や歴史について多面的に理解を深めることがとても大切だと思いました。ひとつの方向から見えることを反対の方向から見つめてみたり、また別の角度から見つめてみたり、隠されているできごとについても調べてみたり、自分自身の視野を広げられるように日常から意識しておかなければいけないと感じました。ありがとうございました。

・難民についてより深く知ることができました。

自分もいつ何があって難民になるかも知れない。難民になってしまったらどうするのか。

そして「知る」と言うことの大切さを感じました。

#494 20231029

 

岩崎裕保からあなたへ

 

16SDGs勉強会~難民について

 

国連UNHCR協会によれば、世界の強制移動の数は1億1千万人に達しており、世界の74人に1人(世界人口の1%以上)が故郷を追われていることになります。そのうち、難民は約3530万人、国内避難民は約6250万人、庇護希望者は約520万人います。

 

最初にグループ内で話し合いをしながら、難民について「知っていること」「知りたいこと」をポストイットに書き出して、参加者全員が見られるようにホワイトボードに貼りだしました。

次に「難民ってどんな人?」というクイズをしました。たとえば、「世界の難民の数は、第二次世界大戦後、増え続けている」「日本政府は、戦争や紛争から国外に逃れた人を難民とは解釈していない」「難民条約では、難民を出身国に追い返すことはできない」「アインシュタインは難民であった」などと書かれた15枚のカードの内容の正否を判断して、順番に並べていって、最初に答えたカードに戻ってくることができれば全問正解となります。

このクイズを通して、難民条約第1条では「人種・宗教・国籍もしくは特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見を理由に、迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいるものであって、その国籍国の保護を受けることができない者、またはそのような恐怖を有するために国籍国の保護を受けることを望まない者」と定義されていること、すなわち難民条約の難民の定義では「移民」や「被災民」は難民ではないことや難民認定をするのは各国政府であることなどが明らかになります。(ちなみに、神戸の洋菓子屋さんのモロゾフやゴンチャロフ、そして野球のスタルヒンもロシア革命後に亡命してきました。)ここまでのワークで分かったことを、ホワイトボードに貼られたポストイットから外していくと、「どうしたら(難民を)減らせるのか」「難民を最も(多く)受け入れている国は?」「国際社会は日本の難民への対応をどう評価しているのか?それに対する日本の言い訳は?」といったものが残りました。

 

「難民」はいつの時代にもどこでも、戦争・紛争・差別・迫害などによって発生してきましたが、近代になって問題として顕在化してきた背景には、nationという概念が一般化したことにあると思われます。nationの根っこの意味は「民族」です。その民族が国家を形成するようになりnation は「国家」という意味を持つようになり、のちに「国民」という風になっていきます。義務教育レベルでは米国やロシアそして中国などを「多民族国家multi-national」と教わりますが、今や多民族でない国家などは存在しないのではないでしょうか。「国際inter-national」はきわめて一般的ですが、戦前のドイツや日本は「超国家ultra-national」というふうに表現されます。一民族が一国家を形成するという考え方が排他的な言動につながっている可能性は否定できないのではないでしょうか。

さて、簡単に歴史を振り返りますと、第一次世界大戦後にロシア革命がありトルコ帝国が崩壊することで多量の難民が発生し、第二次世界大戦後にはより大量かつ広範な地域で難民が発生しました。いま可視化された喫緊のパレスチナ-イスラエルの問題に目を向けると、国家を持たないユダヤ人たちは19世紀からアフリカや南米に国家建設を考えていましたが、1948年に現在の地にイスラエルを成立させました。そこで状況が不安定になり、1949年に「国連パレスチナ難民救済事業機関」が作られました。1950年には「国連難民高等弁務官事務所UNHCR」ができ、UNHCR54年と81年にノーベル平和賞を受賞しました。1951年に「難民の地位に関する条約」ができ、1967年にはそれを補う「難民の地位に関する議定書」ができ、この二つを合わせて「難民条約」と言っています。

 

日本は1970年代からインドシナ難民を受け入れ、1981年に「難民条約」に加盟しました。2022年の日本の難民認定数は202人で認定率は2.0%で、難民不認定とされた人は1万人以上でした。2022年の難民認定者202人のうち147人がアフガニスタンの人たちでした。ウクライナから逃れた人は、難民にあたらない「避難者」であるというのが日本政府の見解で、日本に来た2486人のうち90日間の「短期滞在」の在留資格で入国後、国内で1年間働ける「特定活動」の資格を得たのは1959人です。

こうして見ると、米国の軍事活動に日本が関わってきたインドシナとアフガニスタンからの人たちの受け入れはある程度したけれども、それ以外の地域にはあまり関心を示してこなかったということが透けて見えます。ウクライナも米国が支援をしているという現実と無関係ではなさそうです。

日本社会は難民問題にきちんと向き合ってこなかったと言われても仕方がないようなことが今年2023年に成立した「改正入管法」に顕著に見られます。これまでは難民認定の手続き中は強制送還が停止されるという規定があったのですが、この改定案では「例外」を設けて、難民認定申請が3回目以降となる申請者については送還が可能とされているのです。難民条約では、生命や自由が脅威にさらされる恐れのある国へ強制的に送還してはいけないという「ノン・ルフルマンの原則」があるのですが、この新しい法はそれに抵触します。日本国憲法第98条は、「この憲法は国の最高法規である」と謳った上で、第2項で「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」としています。日本の市民社会が、こうした政府の姿勢――「違憲」なのではないでしょうか――をチェックしていくことはとても大切だと思います。

最後のワークとして、参加者に「自分が難民になる可能性はあるだろうか」と尋ねてみました。ほぼみなさんが「ある」という認識をお持ちのようでした。「どんな場合、あるいはどんな状況で」との問いには「近隣国家からの攻撃があった時に」という声がありましたが、冷静に考えると、それは「日本国家が日本国民を守ってくれない」ということを指しているのではないでしょうか。これはほんとうに困った状況です!

 

◆参加人数:9

 

◆ドネーション:25,000円(第24回種を蒔く人のお話を聴く会のドネーションと合わせて)

1024日に25,000円をみ・らいず2様にお送り致しました。

 

◆参加者の皆さまのお声

・日々、人間の歴史と共に、増え続ける難民…

知らず知らずのうちに日本も(自分も)、難民をうんでいたということ…

 様々な角度から情報をみて判断していく大切さを改めて感じました。

 ありがとうございました。

・難民の問題を分かりやすく教えて頂きました。しかしなかなか何をやれば良いのかは難しく、歴史的背景もありほんとに難しい問題だと思いました。

・難民についてワークショップ楽しかったです。大変勉強になりました。

自分が難民になるなんて考えた事のない平和ボケしてる自分に反省です。

・難民が生まれる背景や歴史について多面的に理解を深めることがとても大切だと思いました。ひとつの方向から見えることを反対の方向から見つめてみたり、また別の角度から見つめてみたり、隠されているできごとについても調べてみたり、自分自身の視野を広げられるように日常から意識しておかなければいけないと感じました。ありがとうございました。

・難民についてより深く知ることができました。

自分もいつ何があって難民になるかも知れない。難民になってしまったらどうするのか。

そして「知る」と言うことの大切さを感じました。

 

 

プロフィール:blue earth green trees SDGs勉強会プロジェクトリーダー。同志社大学法学部政治学科卒業、同大学院アメリカ研究科修了。ニュージーランドが関心の地域。私立中高で英語を教え、その後大学に移って「平和研究」「国際協力論」「NGO/NPO論」などを担当。2008年から6年間開発教育協会(DEAR)代表理事。今はDEAR顧問と関西NGO協議会(KNC)監事。

種を蒔く:#385,383,360,354,349,342,319,310,303,292, 266, 259, 254, 237, 224, 197, 175, 143, 124, 121, 98, 79, 73, 69, 67, 48

 

 

【過去のご報告】

2023年4月15日開催:「第15回SDGs勉強会~貿易ゲームで世界の構造を考える」のご報告

2022年10月22日開催:「第14回SDGs勉強会~沖縄から考える平和」のご報告

2022年10月22日開催:「第13回SDGs勉強会~ファッション・服について考えてみよう」のご報告

2022年10月8日開催:「第12回SDGs勉強会~プラスチックとゴミとリサイクルについて考えてみよう」のご報告

2022年8月13日開催:「第11回SDGs勉強会~国際協力/援助について考えてみようⅡ」のご報告

2022年6月18日開催:「第10回SDGs勉強会~国際協力/援助について考えてみようⅠ」のご報告

2022年4月23日開催:『第9回SDGs勉強会~子どもの権利条約について考える』のご報告

2022年2月26日開催:『第8回SDGs勉強会~豊かな社会にとって大切なこと』のご報告

2021年12月11日開催:『第7回SDGs勉強会~~核(兵器)について』のご報告

2021年10月16日開催:『第6回SDGs勉強会~コンビニについて』のご報告

2021年8月28日開催:『第5回SDGs勉強会~フェアトレードⅡ』のご報告

2021年6月12日開催:第6回種を蒔く人のお話を聴く会/Listening to Seedfolks〜五ふしの草 榊原一憲さん) 』& 『第4回SDGs勉強会(フェアトレード)』のご報告

2021年2月13日開催『第4回種を蒔く人のお話を聴く会/Listening to Seedfolks〜登大路総合法律事務所 所長弁護士田中啓義さん』& 『第3回SDGs勉強会』ご報告

2020年12月26日開催:『第3回種を蒔く人のお話を聴く会/ Listening to Seedfolks 〜国連UNHCR協会芳島昭一さん』&『第2回SDGs勉強会』のご報告

2020年10月17日開催:『第1回種を蒔く人のお話を聴く会 & 第1回SDGs勉強会』のご報告