ご参加下さった皆さん、ありがとうございました。ご協力に感謝致します。
◆参加人数:8人
◆ドネーション額:15,000円(第17回ひとときカフェのドネーションと合わせて)
・5月26日に国境なき医師団にお送りし、ガザの支援のためにご活用いただきます。

◆参加者のお声
・用意されたものでもないのに、ビックリするくらい共通のテーマがあった。
そして楽しかった。
本を語ることで自分を語っていた。
自分が朗読し語っている間、うなづいたり真剣な眼差しを感じていた。
それだけでひとつのカタルシスがあった。
他者の物語を聴かせて頂きながら、いろんな情景が目に浮かんだ。
その方の想いが声に乗って届いて来た。
もっと語り合いたいと思った。
そんな気持ちのまま「ひとときカフェ」になだれ込んだ。
・皆さんの選ばれた本から得たキーワードは、不思議と共通したテーマを感じました。お話を聞きながら、自分の中で忘れていたことを思い出し、考えることができました。また新しい言葉や考え方を知りました。
なぜ、この本を選んだのか?どう読み解いたのか?何を感じたのか?それぞれの想いをお聞きできるのも本で言うと作者の意図を知る感じで楽しいです。改めて本は素晴らしいなぁと思いました。
・昼下がり、古民家のオープンスペースで読みたい本を読んで、聴き合う会はとても和やかで居心地のいい時間でした。 持ち寄った本はそれぞれ違っても、共通の思いがたくさんあって驚きました! 共感し合える仲間や時間はいかに大切かと実感していました。
◆プロジェクトリーダー:岡本幹子、田中啓義
種を蒔く#612 2025年5月31日
岡本幹子からあなたへ
プロジェクトレポート・種を蒔く 「第12回ROUDOKUプロジェクトを終えて」 2025.5.24
五月雨の音が静けさを感じさせる土曜の午後、第12回ROUDOKUプロジェクトが行われました。参加者は8名。丸い木のテーブルを4人ずつで囲み、穏やかで清々しい空気感の中でスタートしました。まずはいつものように肩回り、首周りをほぐし、呼吸を整えて準備オッケイ。お久しぶりの集まりなので、自己紹介では最近の推しをお話しいただきました。スポーツジム通い再開、ポッドキャスト、北極圏に行きたい、ご当地おいしいもの、花を知る、初孫待ちなど…それぞれの生活感を垣間見て、一気に距離が近くなりました。今日もいい対話が生まれそうという直感!早速、用意された九つの作品の一部を読み、選択した理由や思いなどを語っていただくことにしました。今回も興味深い内容が揃いましたよ。面白いことに「調和、平穏、幸せを導くのは何なのか…」という共通したメッセージがありました。

◆ROUDOKU作品について◆
①「太陽」 森 絵都作
突然に彼女を襲った奥歯の激痛…コロナ禍にもかかわらず、すぐに診てくれた風間歯科医院の院長から「奥歯に異常はなく、痛みは心の痛み、代替ペインの犯人を二人三脚で捜しましょう」と言われる。思いつく候補はことごとくはずれ、ある日ふと目がとまった黄色の割れたお皿。いつも太陽のように心を温めてくれる、大好きで大切な豆皿を割ってしまった悲しみを意識の外に締め出していたことに気付いた瞬間、肩の力が抜けて、痛みが少し和らいだのだ。
何かに追い詰められている時、悩みや悲しみがある時、体のどこかが痛くなることは現実的によくある。どの方も体験したことがあるのではないか。そんな時、あえて苦しみの本質に向きあうこと、そのうえで誰かに話をして手放してみること、一緒に考えてもらうことが痛み緩和のすぐれた治療方法ではないか。
作者は語る。「すべてのものは失われる。だから自分に言いきかせる。過去に執着しない。変化を肯う。細胞の新陳代謝を阻害しない。不確かな世界と折あうための柔軟性を確保する」
私たちの心は、あふれる情報に大きく揺れがちである。だからこそ自分の内なる心に気付き、柔軟に、しなやかに生きる練習を続けていきたい。自己の静寂こそが平和へのスタートラインのだろう。
②「ネガティブ・ケイパビリティ ‐答えの出ない事態に耐える力‐」 帚木蓬生作
ケイパビリティ(capability)…耳慣れない響きであるが、一般的には「能力」「才能」といった意味らしい。
さらに「ネガテイブ・ケイパビリティ」とは、不確実な状況や答えのない問題に直面した際に、すぐに結論を出そうとせずに、その状態を受け入れる力をさすらしい。これまでの教育は、的確で素早い処理能力(ポジティブ・ケイパビリティ)を身につけることを求めてきた。しかしこの複雑に変化し、先行きの予測が難しい世の中では、問題解決が困難な答えのない事態やどうしようもないちゅうぶらりの状況は多々あり、そこを耐え抜く力、踏ん張る力が実は必要なのだ。直面する困難な事態を冷静に受け止め、落ち着いて分析したり、互いに理解しあい解決策を探ったりすると、新しい何かに気付くかも…。
精神科医でもある作者が恩師から学んだこと。「精神科医にとって一番大切なことは、親切である。親切は共感の入り口である。不寛容、思いやりのなさが争いを招くのだ」
今、子どものいじめ、自殺、カンニングなどの不正行為、犯罪などの問題が多発し深刻化している。それは何故か。子どもたちが求めているものは何なのだろう。自分を思ってくれていると感じる確かな言葉、ふれあい…まさしく大人から受ける愛情や思いやりなのではないか。
「You are kind!」そう声をかけられる生き方をしたい…
③氷の轍 桜木紫乃作
複雑な人間関係が絡み合った推理小説であるこの作品から、人の生き方について考えさせられた。
80才の滝川老人は釧路でタクシーの運転手をしている。既にからだは病に侵されており、生涯独身でつつましく人生の終わりを迎えようとしていた。若い頃は、青森のストリップ小屋で働いていた。小屋のオーナーで踊り子のさわこに恋をし、彼女の二人の娘の面倒も献身的にみていた。しかし小屋は潰れ、娘たちは人買いにさらわれていく。ある日、老人は古本屋でさわこにあげた詩集(北原白秋)を見つけ、貧しくても心豊かだった昔のことを思い出し、何とかして母と娘たちを探しだして心を繋ごう、関係を修復しようと決心する。そして苦労の結果みつけた姉娘と言い争い、誤って老人は岸壁から落ちてしまう。娘はその日から加害者となり、新たな苦しみを背負うことになる。
滝川老人は自分の善意、さらに沸き起こった人恋しさから命がけで行動したが、思いもよらず、大切に思う娘を犯罪者にしてしまった。人と人の関係は難しい。双方が善意であっても完全に理解しがたい。人とつながるところには葛藤がある。ならば一人の方がいいのか。否、他者がいてこその豊かさではないか、人生に愛があふれるのではないか。人生は一人でも二人でも同じではなく、一人よりも二人の方が必ず豊かだろう。
シンジツ一人ハ堪ヘガタシ。
二人デ居タレドマダ淋シ、
一人ニナッタラナホ淋シ、
シンジツ二人ハ遣瀬ナシ、
シンジツ一人は堪へガタシ。
(北原白秋「他と我」より)

④BANKSY(パンフレット)
世の中は日々不穏、争いごとも多く、戦争はいまだになくならない。
バンクシーはストリートで活動するグラフィックアーテイスト。
一つ一つのアートワークにこめられたメッセージが心に響く。
その中の一枚を紹介しよう。「Love is in the Air」
街頭で抗議のため火炎瓶を投げようとしている男、一見暴徒に見える。しかし手にしているものは花束である。
この絵からどんなメッセージが読み取れるだろう。「火炎瓶(暴力)ではなく、花束(愛)をもって戦おう」「暴力で平和を得ることはできない…」反戦平和、暴力反対の力強い言葉なのか。嫌な言葉やいじめではなく愛ある対話をという発信か。

⑤天然生活より エッセイ「愛について」 小川 糸作
北海道で自給自足の生活をおくる男性。鳥にあげる餌さえも自分で作る。
植物は緑の友。なかでも「ゆりね」とともに暮らす。花と出会う喜び、愛を感じる生活。
自分の中に生まれる愛を内にひそめておくばかりでなく、今こそ外に発信したい。
自分だけの幸せは楽しくない。
動植物からいただいた愛のパワーを自分自身で何かに変換して他に与えていく。
美しい光合成が美しい呼吸となる。
愛は循環する。
受け取ったり、与えたり、地球をめぐっている。
自分の庭で育った花や野菜を誰かに…愛を与える実践を続けていく過ごし方に共感する。
⑥「唯識の思想」 横山紘一作
ポッドキャストで「古典ラジオ」を聞くのが趣味。3人で歴史についてしゃべる番組がお気に入りだ。その中で最澄と空海編があり、とてもひきつけられた。自己を確立するということにフォーカスする。朝目覚めた時、今日は何をする日であったかではなく、自分は何であったかと考えてみよう。今自分がここにいること、生きているということの不思議について想像してみよう。感情や思い、言葉は心の奥から表面化するもの。心を観察、分析し、そのあり様を説き明かす唯識とは何か。古くて新しい思想の世界がおもしろい。
⑦ヨーロッパの装飾と文様 海野 弘作
文様のパターンは、国や言葉の違いを超えて共通組織を生み、意思疎通ができる。世界各地でバラバラに生まれた文様や装飾は、流通によってやがて出会い、混ざり合い、新たな文化となって人々をつなげていく。世界を旅する大いなるロマンを感じる。見ているだけでひきつけられる。
⑧ジョン・レノン PLAYBOYインタビュー
ジョン・レノンが亡くなる1週間前に、雑誌プレイボーイの行ったインタビューの特集。10代の頃に心に響いたビートルズのナンバー。今も世代を超えて聞き継がれる彼らの音楽には、メンバーの若さゆえの葛藤と社会へのメッセージ、平和と愛の精神が詰まっている。特にジョンVSポール、2つの才能のぶつかり合いから生まれた数々のヒット曲。曖昧のない人間関係、あくまでも自分にこだわり続ける音楽観が、無二の詩とメロディを作りだしたのだろう。
自分の弱さやドロドロしたところもさらけ出している言葉に、レノンのリアルを感じて引き込まれる一冊だ。
◇「All My loving」これは残念なことにポールの曲だ。くやしいけどよい曲だね
◇10代の頃、親を尊敬したことはなかった。好きだけどね。愛はあったが支配的だった。そんな大人にはなりたくないと思ったよ
⑨「動的平衡」 福岡伸一作
「全ての物は壊れながら、壊しながら再生していく」今、注目される思考で、大阪・関西万博に「いのち動的平衡館」が設置されることになった。昔からこの考え方が好きで読み続けている。
1月に夫に腎臓を移植した。私の体が健康で、夫の細胞と適合したことが幸いだった。夫の体の中で自分の臓器が循環し、より良い形で再生している。互いに健康な心身を築くための新たな日々。この経験から「動的平衡」の可能性をあらためて考えているところである。
秩序は何もしなければ乱雑の方向に流れがちである。生命にとってのエントロピーは加齢による老化、老廃物がもたらす酸化など…。この流れをできるだけゆるゆると、やんわりにしたい。
生命は退廃しない。細やかに変化し続けている。注目すべきは、作ることより壊すこと。健康を保持し、加齢を緩めるために、不必要なものを手放しながら新たな気づきにつながっていく。変化しながら平常を保つ可能性を信じていきたい。
◆参加者の声より◆
・キーワードは思いやり…今後の人生の方向性を左右する心の持ち方ではないかと思った。
・他者の存在は重要。人と人の関係でも、細胞レベルでさえも助け合いの力をもっているではないか。
・人のつながり、愛、思いやり…大事な言葉だ。
・日々の生活の中でも対話を求め、よりよくすごしたい。
・自己と他者、バランスをとるためには相手が必要。一人ではできないな。
・人との出会い、そこに生まれる対話がうれしい。世界のこと、健康のことを語り、共感できる大切な時間。
今回もこの場を選び、好きな本、作品をもって集まってくださった皆様に心より感謝します。
雨の音を聞きながら、愛が循環する時間となりました。皆さまの心のこもった言葉に癒され、元気をいただきました。本当にすてき!
次回は11月です。ぜひプロジェクト案内をチェックしてご参加くださいね。それではまた!
プロフィール:blue earth green trees ROUDOKUプロジェクトリーダー、元養護教諭、特別支援教育サポーター、blue earth green treesセルフコンパッションを深める呼吸とやさしいタッチ プロジェクトリーダー
種を蒔く:#602,590,582,573,563,560,544,543. 529. 518. 480. 464. 452. 441. 422. 364. 344. 313

2024年11月16日開催:第11回ROUDOKUプロジェクト~多様性を聴き合う&感じるのご報告
◆参加人数:5人
◆ドネーション額:10,000円(第15回ひとときカフェ・ドネーションと合わせて)
•11月18日にテラ・ルネサンス様にお送り致しました。元子ども兵の社会復帰のためにご活用いただきます。
◆参加者のお声
・家族、芸術、命、健康、病気、死などのテーマの本や作品について一人ひとりのROUDOKUを聴き合いました。古文での源氏物語も素敵でした。それぞれが本や作品を選択した理由をお聴きし、お互いへの理解が深まりました。
・今日も楽しく有意義に過ごせました。なかなか出会えない人たちと繋がりあえること、感謝です。
今日の日を大切にしたいです。一歩一歩、少しづつ足元を見ながら進んでいきたいです。
・出会った作品について誰かと聴き合うことで、作品から与えられたものを超え、より豊かに心動かされる世界が広がることを実感し、嬉しい驚きでした。「もしも遠くに行けなくても、もしも長く生き続けられなくても、深く生きることはできる」とのお言葉がとても深く心に響きました。未来に向けての勇気や元気が湧いてくる新鮮な視点をいただけた気持ちです。皆さんが選ばれた作品と、それにまつわる大切な物語をたくさん聴かせていただくことができ、心耕される貴重な時間となりました。本当にありがとうございました。
◆プロジェクトリーダー:岡本幹子
2023年11月11日開催:『第9回ROUDOKUプロジェクト~多様性を聴き合う&感じる』のご報告
■第1回~10回ROUDOKUプロジェクト~多様性を聴き合う&感じるのご報告はこちら